ダブルワーク パート| 多様な働き方と労務管理について

労務管理

ダブルワーク パート|副業・兼業労働者の積極的採用に向けた社会の流れ

(以下、ダブルワーク(副業)と表現する部分は、兼業も含みます。)
少子高齢化により幅広い分野で将来的な人手不足が懸念されています

日本の多くの企業は、これまで会社の規則で「ダブルワーク(副業)を制限する」ルールを定めていました

これは、自社の情報の漏洩や業務がを疎かになることを懸念していたことが背景にあったと考えられます

しかし、2020年のコロナ禍を経て、企業は、従業員の収入を確保するために、
ダブルワーク(副業)を容認せざるを得なくなりました

また人材不足により、多様な働き方を選択する優秀な人材の掘り起こしを理由として、ダブルワーク(副業)を認める企業も増えています

そのためには、結婚、出産、介護、傷病などで第一線から退かなくてはならなかった
優秀な人材が、多様な働き方を選択してもらえるような仕組みの導入が必要なのです

政府の規制改革推進会議においても、2024年夏の答申に向けた議論の中で、
副業や兼業がしやすいような規制緩和の仕組みの導入について議題にすると報道されました

今回は、ダブルワーク(副業)禁止→可能とする場合の労務管理についてお話ししたいと思います

まずは、以下のことについてひとつひとつみていきましょう

社会保険についてはどうするべきか

労働時間の管理はどうするのか

なお、上記の通り、将来的に各企業がダブルワーク(副業)労働者を受け入れやすくするために、ルールが緩和される可能性があります

以下は現時点のルールです。

ダブルワーク パート|副業労働者の社会保険について

社会保険とは
・厚生年金保険
・健康保険

労働保険とは
・雇用保険
・労働者災害保険


厚生年金と健康保険(介護保険)は、保険料を労使が折半して負担します。そして、その保険料は給与の金額(標準報酬月額)に基づき決定されます

加入義務が生じるのは会社側、労働者側それぞれに要件が設けられています

会社側の要件
・適用事業者(社会保険加入を義務付けられている業種及び規模)
・任意適用事業者

労働者側の要件
・75歳未満の正社員(法人代表者、役員)
・70歳未満の週の所定労働時間および月の所定労働日数が、常時雇用される者の
 4分の3以上の労働者
・従業員数101人(2024年10月からは51人)以上の事業場に勤める以下①から④の
 すべてに該当する短時間労働者
  ①週所定労働時間が20時間以上
  ②2か月を超えて雇用される見込み
  ③学生ではない(夜間学生、通信制は除く)
  ④月額88,000円を超える賃金

複数の事業場から雇用される場合も、それぞれの職場で上記の要件を満たせば加入することが義務付けられています

そこで、労働者側の疑問として健康保険証は複数持つことになるの?という疑問が生じます

健康保険は、メインの会社を労働者自身が選択して届け出ることにより、その会社が加入する健康保険組合等から健康保険証が発行されます。

ダブルワーク パート|副業労働者の労働保険について

雇用保険と労働者災害保険を併せて「労働保険」と呼びます

雇用保険は、原則として複数加入することができません

雇用保険の加入要件
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・31日以上引き続き雇用される見込み

それぞれの会社における雇用保険の加入要件を満たす場合は、主たる賃金を受け取る方の会社になります

(ただし、65歳以上労働者が複数の会社に雇用され、それぞれでは満たさないが、通算すると加入要件を満たす場合、手続きをすることで加入することが可能な場合があります)


労働者災害保険は、それぞれの会社に加入義務があります。

労働者災害保険の加入要件
・全ての労働者(パート・アルバイト含む)


因みに余談ですが、労働者の立場からはイマイチ会社から天引きされた金額をどのように会社が処理しているのか見えないですよね

社会保険料は毎月のお給料から差し引かれた分をその都度、会社が納めますが、労働保険料は年に一度「年度更新」と言われる手続きで、前年度の確定保険料と翌年度の概算保険料を計算して、会社が納めています

ダブルワーク パート|現行法における労働時間の管理(残業代)について

法定労働時間は一日8時間、週40時間です
この時間は、複数の会社で雇用される場合も例外ではなく、通算されます(労働基準法第38条)

あくまで、労働基準法は労働者保護を目的としているため、雇用+雇用の場合です。
一方が業務委託だったりフリーランス等の場合は通算されません

そして、契約締結の順番と1日の中で働く順番によってどちらが時間外を支払わなくてはならないのか決まります

例えば、5年前からA社から朝8時から13時まで雇用されていたところ、2年前からB社で14時から18時まで雇用されるようになった場合、

1日の所定労働時間はA社5時間+B社4時間の合計9時間となります。

1日の法定労働時間8時間を超えるため、後から契約したB社に8時間を超えた1時間分の時間外労働(基本給✖️1.25)の支払いが発生します

ただし、会社は労働者のダブルワーク(副業)部分の労働時間も管理する必要があるため、ダブルワーク(副業)する場合は届出や許可を求めるようルールを設けている会社が多いことと思います

そして、労働者がB社でダブルワーク(副業)することをA社に届け出た後、所定労働時間5時間を超えて残業させた場合、A社にも時間外労働(基本給✖️1.25の支払い)が発生します

このように、正しく残業代を支払うためにはA社もB社も相互の労働時間も把握する必要があるのです

この点が、現在ダブルワーク(副業)を認めないというルールを定める会社が多い所以だと思います

会社においてダブルワーク(副業)の労働時間を管理しなくてはならないというのは、実務上、現実的ではないからです

今後、労働者と会社側の相互に負担の少ないルールに見直されることを期待したいです

ダブルワーク パート|小さな会社でも、優秀な人材を確保するために

人手不足が顕著な現代において、優秀な人材に継続的に働いてもらうためには。。。

労働者に働きがいを感じてもらえる制度設計が不可欠です。

まずは、お気軽にご相談ください。

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